”ユグドラシルより生まれた大地は、まさに天の国。
　ユグドラシルより生まれた国は、ヴェルバルア。

　そしてそれとは別に生まれた魂の地、イズティア――”




Yulca - 11 -




初めて足を付いたその大地は木々に囲まれ薄暗い。
ユルカは掴んでいたクルシスの腕を放し、
振り返り様に呟くように声を出した。



「じっとしていろ」



そう言うとユルカはクルシスの額に指をつく。
その行動にクルシスは無意識に息を飲んで、
視線を合わせない無表情なユルカを見詰めた。

途端に溢れる光の結晶。
それはクルシスを生み出した時と同じように何処となく冷たい。



「我が魂の半分を糧にし、光で補い生まれよ」



ユルカは放った。
光の中から生まれたのはユルカと似ても似つかない双子の子供。

金色の髪を持ち左目がない女の子と、
漆黒の髪を持ち右目がない男の子。
彼等は同時に瞼を開いて同時に父親であるユルカに笑いかけた。



「姉がラナ、弟がイオ」



ユルカはそう名付けるとクルシスに背を向け、
再び翼を広げてラナとイオの手を取る。
クルシスもユルカに手を伸ばそうとするも、
それはまたしても冷たく払われた。



「お前はここにいろ。翼ももう必要ない、捨てろ」

「どう言う……意味？」

「お前を捨てる」

「どうして！僕は父さんの眼なのにっ」

「眼の代わりなら今創ったこれで成せる」

「……！！」



例えようのない不安と虚無感がクルシスを襲った。
今まで自分が父の眼の代わりをして、
傍にいて愛していたのに。
どんなに冷たくあしらわれても信じていたのに。

言葉が出なかった。
ただラナとイオの笑う声がそこに響く。



「お前を消してしまってはお前に宿る生の魔力も扱えなくなる。
　故にお前を生かす。行くぞ、ラナ、イオ」



翼を翻して空へと飛び立つ。



「父さんっ、どうしてっ――」

「父の最後の願いだ。従え」



一人残されたクルシスは泣いた。
涙が枯れるまでずっと。
















Yulca - 11 - 終わり

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